諏訪市/北澤美術館でルネ・ラリックを鑑賞
CATEGORY中信
先日、諏訪で諏訪みそ天丼を初めて食べてきたと記事にしましたが、私には諏訪に行きたかったもうひとつのお目当てがありました。北澤美術館で開かれている「アール・デコのガラス工芸 ルネ・ラリック」の展覧会です。
ワインが好きになると、より美味しく飲むことができるグラスが欲しくなります。デュラレックスのように丈夫で割れにくい「コップ」で飲むのと、バカラやリーデルなどの口当たりが極く薄い「ワイングラス」で飲むのとでは、同じワインを飲んでも美味しさに違いがあると感じる方も多いと思います。
お茶もそれなりの器でいただけばより美味しく、コーヒーや紅茶も磁器のカップ&ソーサーでいただけば、ひと味も二味も美味しいものです。
ドンペリニョン専用に作られたその名も「ドンペリニョン」というバカラのグラスに注がれたシャンパーニュの泡立ちの美しさは、他に及ぶものはありません。一筋に綺麗に立ち上る泡の美しさもさることながら、グラスそのもののシルエットもまた美しいので、見ているだけで酔いしれてしまいます。
昔買い集めたわずかばかりのグラスのなかで、震度6強の揺れ(当時は栃木におりました)だった3.11の大震災の時に、いくつかがあっけなく割れてしまいました。そんなはかなさもまた、繊細なグラスの魅力でもあります。酔いが廻ってから使ったグラスを洗えば割ってしまうのは必至ですから、翌朝しらふになってから洗ったものです。
ならばと、バカラの「アルクール」という肉厚のワイングラスも買ってみましたが、ビジュアル的には美しくとも、ワインを注いだグラスを唇に触れると、どうにもいけません。やはり、触っただけでも壊れてしまいそうな薄いグラスの方が、美味しいと感じるのです。
反対に、飲み心地は犠牲にしてでも欲しくて数客だけ持っているのが「ラリック」です。まだ栃木から安曇野に持ってきていませんが、カクテルグラスは薄手に作られていて、足にラリックらしいフロスティックなあしらいが施されています。
こちらは、唯一安曇野に持ってきた、以前に友人からプレゼントしてもらったラリックのショットグラスです。ワインを搾ったぶどうのカスを更に絞って作られるマール(グラッパ)や、シャルトリューズ、ベネディクティンといったアルコール度の高いお酒を少量だけぐいっとヤるにはもってこいのグラスです。天使のように、すぐに天に舞い上がるほどに酔っ払うよ、ということでしょうか。
見てお分かりのように、天使が浮き彫りの部分が曇りガラスになっていますが、「サチネ」と呼ばれる、これがラリックのグラスの魅力です。
そんなラリックの収蔵コレクションが見られるというので、諏訪みそ天丼とともに、楽しみにして出かけて行ったわけです。
諏訪湖の湖岸沿いの道路を走っていると、北澤美術館の案内標識が出ていますので、ナビなしでも容易にたどり着けると思います。エミール・ガレやドームなどのガラス工芸品美術館として知られています。
創設したのはこの方です。
展示室の中はもちろん撮影禁止ですので、写真を取ることはできませんでしたが、やはり気になったのは「食器」の類です。「特別出品:皇室が愛したラリック」というサブタイトルのとおり、昭和天皇が皇太子時代に外遊した際に持ち帰った品や、秩父宮雍仁親王(やすひとしんのう)が1937年(昭和12年)にロンドン土産として持ち帰った品なども展示されていました。朝香宮家旧蔵品のなかに、その名も『ニッポン』とか『トウキョウ』というグラスやデカンタ類には最も釘付けになりました。洒落た水玉模様が印象的でしたが、クリスタルの質は、現在の製品の方が良いようです。
参考までに展示作品のリストをコピーしておきます。
■ パチネ、サチネ
ラリックのガラス工芸品は、融けたガラスが鋳型のなかにゆきわたり、形と文様を同時に写し取って制作されます。ガラスの表面に浮き上がるデコボコ模様(=レリーフ)を引き立てるための工夫がパチネ、サチネと称される表面加工の技法です。
サチネ
サチネは、弗化水素と硫酸を混ぜた強い酸にガラスを浸し、表面を腐食させることでつや消し処理(=フロスト加工)を施すことです。サテンのようになめらかな風合いからサチネと命名されました。
パチネ
パチネは、文様のくぼみに絵の具をすり込む表面着色法のことで、レリーフ文様が浮き立ちます。
■ 型ガラス
ラリックの加工法は、鋳型を利用した成形法に特色があります。あらかじめ形と文様を整えた鋳型の中に、高温で融けたガラス種を吹き込み(型抜き)、あるいは流し込んでプレス(型押し)することで形と装飾が同時に出来上がる仕組みです。
鋳型は繰り返し使うことができる金属製で、同じ形の製品をたくさん作り出すことができます。鋳型を利用した「型ガラス」の製法は、本来手作りの手間を省いて安価な普及品を作るための手段でしたが、ラリックはそれを逆手に利用して、芸術性の高いガラス作りを産業の基盤に載せることに成功しました。
■ オパールセント・ガラス (仏語:ヴェール・オペレッサ)
ガラスにフッ素、アルミナ、リン酸塩などを混ぜて、いったん成形したあと再び焼き戻して冷まします。すると、温度が下がるにつれて厚い部分がより白く、うすいところは透明に近い青白い色に発色します。それはまるで宝石のオパールのような乳白色の色合いであることから「オパールセント」と呼ばれています。1920~30年代のラリック製品に多く用いられて大流行しました。
<注>北澤美術館では「オパルセント・ガラス」の表記でした。
■ ラリック社について
ラリック社は1905年、アール・ヌーヴォーの天才宝飾デザイナーと呼ばれ、アール・デコのガラス工芸作家の第一人者でもあったルネ・ラリックによって創立され、その後、息子マルク、孫娘のマリークロードへと引き継がれ、現在に至っています。
製品デザインは作家性を色濃く残したもので、今でもフランスのアルザス地方にある工場で昔ながらの伝統的製法によりひとつひとつ作られています。
透明クリスタルとフロステッド(つや消し)クリスタルの組み合わせによる独特の優美で繊細な作風を持つラリッククリスタルは、”フランスクリスタルの華”と呼ばれ、歴代フランス大統領のV.I.P.へのギフトとして用いられています。
《出典》「パチネ、サチネ」・「型ガラス」・「オパールセント・ガラス」については、展示室の説明パネル文をメモしたものを基に書き直してあります。「ラリック社について」はラリック製品に添付の栞より転載しました。
■ 中村孝子 ガラス展 -ナカムラ野菜農園の在るところ。-Part.2
ガラス造形家の中村孝子さんは、1990年代から独学でキルンワークでのガラス制作を始めました。1996年には兵庫県芦屋市にアトリエを構え、ガラスブロックを石膏型に詰めて焼成鋳造するコールドキャスト技法で様々な造形表現に挑んでいます。
中村さんが近年追求しているのは、身近な野菜の造形です。「野菜農園」シリーズでは、畑や栽培箱に見立てた展示空間の中で、ガラスの野菜たちが実りを迎えています。半透明のガラスが光を纏うと柔らかく輝き、まるで野菜が呼吸しているかのようです。色ガラス片が熔け混ざり合う繊細な色合いや、瞬間を凝縮したかのような造形表現は、一つとして同じ形のない自然の多様な形態に迫るものです。
ひそやかでありながら逞しい野菜たちの生命に寄せる、作家の想いが溶け込んだガラス作品。その研ぎ澄まされた美の世界をご鑑賞ください。
会場:北澤美術館 1F 多目的ギャラリー
開催日程:2015年10月21日(水)~2015年12月17日(木)
フロステッドガラスの野菜達もユニークでした。みょうが、ロマネスコ、アスパラガス、かぼちゃ、ブロッコリーなどの野菜がそれぞれ彩色、無彩色とあって面白い作品でした。こういうの、好きです♪私にも手が届くお値段ならば、飾っておきたいなと思いました。
北澤美術館
アール・ヌーヴォーからアール・デコにかけての優美なガラス工芸品と、現代日本画を展示。1階展示室は天才ガラス作家エミール・ガレの作品を中心にフランス装飾芸術のコレクションが常時50点前後並びます。2階には東山魁夷など現代を代表する日本画の巨匠たちの秀作が揃っています。
住所:長野県諏訪市湖岸通り1-13-28
TEL:0266-58-6000
開館時間:4〜9月 9:00〜18:00(入館は17:30まで)
10〜3月 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:無休(展示替え期間は休館)
入館料:大人1000円、中学生500円、小学生以下無料
駐車場:バス10台・乗用車50台
アクセス:<車利用>中央自動車道 諏訪I.Cから約10分
東京方面から → 中央自動車道 諏訪I.Cまで 約2時間15分
名古屋方面から → 中央自動車道 諏訪I.Cまで 約2時間30分
大阪方面から → 名神高速 + 中央自動車道 諏訪I.Cまで 約4時間30分
<電車利用>JR中央線上諏訪駅から徒歩で約15分、タクシーで約5分
公式サイト:http://kitazawamuseum.kitz.co.jp/index.shtml
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